世界を驚かせた奇怪、猟奇的な殺人事件の数々、そしてその犯人。科学では解決できないミステリー現象。それらを紹介していくブログです。

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ミステリーの女王、謎の失踪

緑の眼に卵型の輪郭、ピンとはね上がった口髭をたくわえた愛嬌のある外見でお馴染み、「灰色の脳細胞」をフル活用する名探偵エルキュール・ポワロ
名探偵エルキュール・ポワロ

編み物や刺繍、庭いじりが趣味で紅茶をたしなむ姿がお似合いのおばあちゃん探偵ミス・マープル
おばあちゃん探偵ミス・マープル

これら愛すべき名探偵たちの生みの親で、ギネスブックにも「出版数全世界で約20億冊、史上No.1のベストセラー作家」として認定されている、
「ミステリーの女王」ことアガサ・クリスティ。
奇抜なトリックの数々と複雑怪奇な人間関係を上手く融合させたアガサの作品群は、後世のミステリー小説や推理クイズ本などにも、多大な影響を残している。
そのアガサだが、一度まさに自身の作品のような非常に奇妙な、謎の失踪で話題になった事があるのだ。
ミステリーの女王ことアガサ・クリスティ

1926年に「アクロイド殺し」を発表し文壇の話題をさらった、当時36歳だったアガサは新進気鋭の女性ミステリー作家として注目されていた。
(筆者注:『アクロイド殺し』は名探偵ファイロ・バンスの生みの親である作家ヴァン・ダインが『読者に対する詐欺行為』と糾弾するなど当時ミステリー作家、
ファンの間で賛否両論が続出したほどである)
12月3日、アガサはロンドン近郊の田園都市サニングデールの自宅から22時ごろ、住み込みのメイドに行き先も告げず「外出してくるわ」とだけ言い残し、
愛車のモーリスに乗って夜のドライブに出かけたまま、忽然と姿を消してしまったのだ。
(アガサが信頼していた秘書のショーロットと、夫であるアーチボルト・クリスティ大佐には『ドライブに行ってくる』と手紙を残している)
翌朝、彼女の自宅から1時間ほどの田舎道に、草むらにボンネットから突っ込んでいるアガサのモーリスが発見された。
車内にはアガサの運転免許証、毛皮のコート、化粧セットなどが残されており、警察はすぐに捜査を開始。
近くには底なし沼もあり、そこにもダイバーを潜らせて大々的に調べたが手がかりはまったく得られず、捜査は暗礁に乗り上げた。

「新進女性ミステリー作家アガサ・クリスティ、謎の失踪!?」

マスコミはセンセーショナルに書きたて、そしてアガサのプライベートが金銭面以外では現在どん底である事も暴露された。
最愛の母親を亡くし、その直後に夫であるクリスティ大佐が浮気していた事も発覚。
現在離婚協議中であり、不眠や食欲不振に悩まされ、神経的にかなり参っている状態だった、など………
アガサがいなくなると、一番得をするのは夫である大佐であるため、当初世間の疑惑の目は一斉に大佐に向けられた。
「離婚に中々同意しようとしないアガサを亡き者にしたのではないか?」と。しかし、大佐には完璧なアリバイがあった。
大佐は「アガサの失踪に関して有力な情報を提供してくれた方には500ポンド(当時のレートでは今の約200万円)の謝礼を払います」と新聞に広告を載せた。
大佐の犯行ではないとすると、アガサが失踪した理由は何だろうか? 

「新作のトリックが実際に可能か実験しているのでは?」
「単に夫である大佐への当てつけでは?」
「自作自演の売名行為では?」

世間ではアガサが自らの意思で失踪した、という諸説も飛び交い始めた。

そんな騒ぎの中、250マイルほど離れたノース・ヨークシャー州のハローゲートのオールド・スワン・ホテルに、テレサ・ニールという赤毛の女性が滞在した。
テレサはアガサ失踪の翌日から高級ルームに宿泊し、他の客たちとダンスを楽しみ、散歩に出かけるといった毎日で、特に変わったところはなかった。
しかし、ホテルの給仕長がアガサの失踪事件を知り「テレサ・ニールという客が、新聞に出ていた女性作家にそっくりなんです」と警察に通報。
警察が2日に渡りひそかに調査すると、大佐の愛人がナンシー・ニールという名前であり、テレサが同じ姓を名乗っている事と、
さらに「最近南アフリカから戻ったテレサ・ニールの所在を知っている方はご一報を。EC4タイムズ社私書箱R702」という奇妙な広告を、
タイムズ紙に掲載している事が分かったのだ。
アガサ失踪から11日目の12月14日の夕方、警察と共にホテルを訪れたクリスティ大佐は流行の服に身を包んだテレサと対面、妻アガサであると正式に確認。
当時は記者としてこの事件を取材していた、のちの彫刻家リッチ・コールダー卿によると、アガサは落ち着き払った様子で
「記憶喪失にかかっていたの」と答えたという。
アガサが宿泊していたオールド・スワン・ホテル

その後はクリスティ大佐も「妻は一時的な記憶喪失だった」と繰り返し、アガサを診断した医師たちもこれに同調したが、当然のように世間は納得しなかった。
特に不可解なのは、失踪時はカーディガン、ニットスカート、ベロア帽子という軽装で、数ポンドの現金しかもっていなかったはずのアガサだが、
発見された時には流行の服に身を包み、300ポンドもの大金を所持していた。
一体これらの金は、どうやって工面したのか? あの奇妙な広告はなんだったのか? 何故夫の愛人そっくりの偽名を使ったのか?
自分の失踪記事を読んでも分からないほどの記憶喪失だったのに、どうしてホテルの給仕や他の客からは正常に見えたのか?


失踪の理由としては、一時的な記憶喪失と発作的なヒステリーなどが考えられる。
大佐から離婚を迫られていたが、決して愛人の名前を公表しないようにと口止めされ、錯乱状態に陥り一時的に記憶喪失になったアガサが、
愛人の名前を公表して夫の名誉を傷つけたいという潜在意識に従った、という説である。
確かに可能性の高い仮説だが、しかし、これでは発見された時の金銭的な理由に説明がつかない。

その後、アガサはクリスティ大佐と離婚、13歳年下の考古学者と再婚し「オリエント急行殺人事件」「そして誰もいなくなった」といった傑作を次々と発表、
ミステリーの女王の名を欲しいままにした。
しかし、他界するまで50年以上の間、この失踪事件については語ることはなかった。
自伝でも一言も触れることはなく、自分の作品のように「事件の真相」を明かす事はなく、ついに真実を墓場まで持っていってしまった。
のちにアガサの親友となったコールダー卿によると、「あの失踪事件は彼女の作品のスタイルにもとづいて計算されたものだった」と語り、
アガサ自らがシナリオを書き、主役を演じたのだとほのめかしている。
本当ならばTVドラマで名探偵ポワロを演じたデヴィッド・スーシェ並みの役者という事になるが、真実は不明である。

参考文献
世界史 ミステリー事件の真実 (河出書房新社)
世界の未解決事件53 (PHP研究所)

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テーマ:衝撃 - ジャンル:サブカル

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