世界を驚かせた奇怪、猟奇的な殺人事件の数々、そしてその犯人。科学では解決できないミステリー現象。それらを紹介していくブログです。

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女がほしくなると墓場から連れてくる「月夜の屠殺狂」

本名エドワード・セオドア・ゲイン 通称エド・ゲイン

「エド・ゲインは2つの顔を持っていた。1つは隣人たちに見せていた顔。もう1つは死体にだけ見せていた顔だ」(デイリー・ジャーナル)

アイツに人殺しなんて恐ろしいことが出来る訳がない───それが地元プレーンフィールド住民たちの、エド・ゲインに対する印象だった。
頭は弱い変わり者だが気のいい男。誰もがそう思っていた。
月夜の屠殺狂エド・ゲイン
しかし、2人の中年女性を殺害し、おぞましい墓荒らしまでして15の遺体を切り刻んでいた狂人。それがゲインの正体だった。
そしてこのプレーンフィールドの屠殺狂は、恐怖映画『サイコ』『羊たちの沈黙』のモデルともなった。

失踪:よろず屋の男
アメリカの中北部、ウィスコンシン州の中央に位置する広大な平原の真ん中に、プレーンフィールド(何もない平原)という人口600人程度の小さな町がある。
「何もない平原」というその名の通り、本当になんにもなく、視界に映るのはどこまでも続く広大なライ麦畑のみ。
そんな寒村での住民の娯楽といえば鹿狩りと、そして仕事が終わってから飲む酒ぐらいだった。

クリスマスを2週間後に控えた1954年12月8日、この町で「メアリー酒場」という飲み屋を営むメアリー・ホーガンという体格のいい中年女性が行方不明になった。
シーモア・レスターという農夫が仕事を終えての一杯をやろうと店に立ち寄ったが、中には女将のメアリーがいなかった。
いくらメアリーを呼んでもまったく返事がない。不審に思ったレスターはカウンターの中を覗いて仰天した。床が血の海となっているではないか。
レスターは慌てて保安官事務所に通報。駆けつけたハロルド・S・トンプソン保安官は、床に転がる32口径ライフルの薬莢と、引きずられた血の痕を発見した。
どうやら何者かがメアリーを射殺し、その遺体を持ち去ったらしい。しかし、何のために?
現場には争った形跡はないし、レジの中の現金も手つかずのままだ。動機がまったく不明である。事件発生から1ヶ月が経過したが、解決の糸口はまるで掴めなかった。
もとより娯楽の少ないこの町は「メアリーに何が起こったのか?」の話題で持ちきりになった。
メアリーはこの町に来るまではシカゴに住んでおり、いわゆるマフィア、やくざ者とも付き合いがあったので、その関係で「消された」という噂も、真しやかに流れた。
製材所を営んでいるエルモ・ウィークも、塀を直しに来ていた、よろず屋(何でも屋)をして生計を立てている中年男にこの話題を振った。

「エディー。お前がもし本気でメアリーを口説いていたら、彼女は行方不明にならず、今頃お前の家で夕食を作ってくれていたかも知れないなぁ、ははは。
まあ、おそらくメアリーは殺されちまったんだろうが……」


ウィークはこの男がメアリーに気のあることを知っていた。たいして酒も飲めないクセに、メアリーの店に通い、しきりに彼女の様子を窺っていたのである。
すると、よろず屋の男エド・ゲインは笑いながらこう答えた。

「彼女はいなくなってなんかいないさ。今も俺ん家にいるよ。俺が軽トラで彼女を家に運んだんだ」

ウィークは「エディーが珍しくジョークをいった」と笑ってすませたが、3年後にそれはジョークでも何でもなかった事を思い知ることになる。
よろず屋ゲイン
このエド・ゲインは、プレーンフィールドの西の外れの一軒屋に住む、40代後半の無口な男だった。
9年前の1945年末に母が死んでからは天涯孤独となり、農作業もせずに町のよろず屋、なんでも屋としてブラブラしていた。
少々頭のネジが弱いところがあるが、柵や屋根の修理から農場の雑草むしり、さらには留守の時の子供たちの相手と頼んだ仕事はイヤな顔一つせずに手伝ってくれるので、
住民たちは重宝していた。
つまり住民たちにとってはゲインは「ボンクラだけどいい人」であり、そんな彼がメアリーの失踪に関わっているなどとはウィークを含め誰1人として夢にも思っていなかった。

過去:育まれた狂気
1906年8月27日、父ジョージ・ゲインと母オーガスタ・ゲインの2人目の子供として、エド・ゲインことエドワード・セオドア・ゲインはこの世に生を授かった。
ゲインについて語る場合、まずこのオーガスタについては触れない訳にはいかないだろう。
(筆者注:多くの書籍、サイトにも書いてあるように、月夜の屠殺狂エド・ゲインを作り出したのはオーガスタだと私も思っている)

オーガスタは勤勉で敬虔なキリスト教の大家族に生まれた。彼女の父親は狂信的なまでのキリスト教徒で、厳しい躾に加え、子供たちに躊躇無く体罰をおこなった。
その甲斐あってか、オーガスタは父親そっくりの娘に育った。
限りなく厳格で、独善的で、支配的。融通がきかず、自分の考えこそ絶対の正義だと信じ込み、それを他人に押し付けることにも躊躇がなかった。
ジョージと結婚後、オーガスタはすぐにゲイン家の女暴君と化した。彼女は人前でも家の中でも、夫を平気で嘲笑い、怠け者とののしった。
それ以外では夫と口を利くことなどなく、ゲイン家から明るい笑い声や軽口が聞こえてくることは皆無だった。
酒が入っているときのジョージはオーガスタの言葉の暴力に我慢することなく、オーガスタに手をあげることもしばしばだった。
殴られたオーガスタは夫に悪態の限りをつきながら泣き叫び、そのあとは一心不乱に夫の死を祈った。
オーガスタは「子供」という自分の人生への慰めが欲しい一心で、夫をベッドに入れることを許した。
性行為を心の底から嫌悪していた彼女にとって、それは我慢ならないことだったが、彼女はこれを出産のための義務として、歯を食い縛って耐えた。
結果、彼女は長男ヘンリーと次男エドワードの2人の息子を授かることになる。娘を望んでいたオーガスタは酷く落胆したが、くじけはしなかった。
彼女は恐るべき精神力の持ち主であり、そのときもこう誓うことで絶望を乗り越えた。
「この子たちだけは、堕落しきって汚れたよその男どものようにさせはしない」

ウィンスコンシン州のラクロスで、ゲイン家(といってもオーガスタだが)は雑貨屋を始めた。
怠け者で大酒飲みの夫を相変わらず侮蔑し、牝牛のように頑丈な体のオーガスタは、朝から晩まで身を粉にして働いた。
やがてゲイン家はプレーンフィールドに移り住み、農場をかまえた。
人里離れていたことがさらにオーガスタを満足させた。彼女にとっては、もはや世間の全てが堕落し、汚れきったものでしかなかったのだから。
だがさすがに子供たちを隔絶させたまま育てることはできず、学校にはやらなけらればならない。だがオーガスタは子供たちに友達を作るのを禁止した。
エド少年が誰かと遊びたい、とオーガスタに打ち明けると、オーガスタは目を吊り上げ反対した。

「あの子の親父は女癖が悪いって噂さ。この子の母親は誰にでも色目をつかうって評判だよ。あんた、そんな家の子と付き合いたいのかい!?
ここの子供たちなんてあんたの父親と一緒の堕落しきった罪深い存在なのさ!」


声は次第に高くなり、やがて絶叫となる。こうなるとエドも、母親に再度懇願する気力などまったく無くなっていた。
こうして同年代の子とまともに付き合ったことがないエドは、卑猥なジョークを聞くと真っ赤になって逃げ出し、
些細なからかいの言葉にも女の子よりたやすく泣き出す子供に成長した。
エドは「ここにはお前が付き合うようなまともな子供なんていやしない」という母の言葉にウソはない、と思い込むようになった。
エドの中で母オーガスタは唯一の友人であり、全能の女神、聖母となっていた。
オーガスタにとって自分以外の女性もまた、全て堕落し、汚れた存在だった。息子たちに自分の名にかけて、女には関わらないように誓わせた。
しかしエドは忠誠を誓う一方で母の目を盗み、ポルノ雑誌やホラー雑誌を読み耽るようになった。
ゲインの家
1940年、「名ばかりの父親」だったジョージが66歳で死亡。そして1944年、兄ヘンリーは42歳のとき、近所の山火事を食い止めようとして死んだ。
エドは「兄を火事の最中に見失った」と言っておきながら、捜索隊を迷わず「ある場所」まで案内した。そこにはヘンリーの死体が横たわっていた。
それを指摘されるとエドは平然と「不思議なこともあるもんだ」とだけ言った。
ヘンリーの体にはほとんど火傷のあとはなく、頭部には殴られたようなアザが出来ていたという。
実はこの事件の直前に、オーガスタの「洗脳」が浅く社交性のある人間に育ったヘンリーは、エドの前で母の態度や思想を散々非難し
「お前はいつまでお袋にベッタリくっついているんだ」とオーガスタから離れるように助言したという。
だがヘンリーの死因は煙にまかれた窒息とされ、有耶無耶の内に事件は忘れ去られ、エドがオーガスタのもとを離れることはなかった。
ヘンリーの死の直後に、今度はオーガスタが父が死亡した時と同じ66歳で脳卒中で倒れた。エドは母を1人占めできることに半ば狂喜しながら付きっきりで看病した。
その甲斐あってかオーガスタはリハビリできるまでに回復したが、エドに対し感謝の念を表すことはなかった。
しかし1年後、オーガスタは再び倒れた。今度は彼女の鉄の意思をもってしても、回復は不可能であった。1945年12月、オーガスタ死亡。
唯一の友であり、唯一の愛する人、唯一の尊敬出来る人を失ったエドは、葬儀の席で人目もはばからず棺にとりすがって
「母のような人はどこを探してもいない」と泣きじゃくった。
マザコン男エド・ゲインはまともに生きる気力を失い、現実と妄想の区別がつかなくなっていく………。

殺人:吊るされていたもの
3年後の1957年11月16日の土曜午前。またしても殺人の可能性が高い失踪事件が発生した。
鍋、包丁からライフルまで金属製品ならなんでも扱うウォーデン金物屋の女主人、バーニス・ウォーデン夫人が今度は行方不明となったのである。
夫人もメアリー同様に太った気の強い中年女性で、やはりメアリーの時と同様に、カウンターの中には夫人の生命が危ぶまれるような、血溜りがあった。
「アイツの仕業です、アイツがお袋に何かしたのは分かっているんだ」息子のフランク・ウォーデンは駆けつけた新任の郡保安官のアート・シュリーに語気を強めて言った。
「アイツ?誰です?」シュリー保安官が尋ねると、フランクは答えた。「エド・ゲインですよ」
フランクは数日前からゲインが軽トラを店の前に止めて、店の中を窺っていたことを保安官に伝えた。さらにカウンターから手書きの領収書が見つかった。
血が飛び散った一番新しいその領収書はゲイン宛てのものだった。
シュリー保安官はゲインを見つけ次第身柄を拘束するよう、無線で各方面に連絡を取った。
その頃、製材商のエルモ・ウィークはゲインの所有する農場で迷い込んでいた鹿を仕留めた。
車のフロントに鹿を縛り付けて帰ろうとしたら、ゲインが運転するフォードのセダンがこちらに向かってきている。
ゲインの土地に勝手に入り込んで鹿狩りをしていたウィークは「ヤバ、見つかった、エディーに怒られる」と焦ったが、ゲインは愛想よく手を振り何を急いでいるのか
「いつもよりも速い運転スピードで」そのまま走り去っていった。
午後になって近所に住む、ゲインの数少ない少年時代からの友人でいつも親切にしてくれるボブ・ヒルとその妹のダーリーンが、ゲインの家を訪れた。
車のバッテリーが切れたので、新しいのを買いたいので大きな町まで乗せていってほしいと頼みにきたのだが、ドアを開けて現れたゲインの両手は血まみれだった。
ゲインは「鹿を捌いてハラワタを抜いていたんだよ」といってニヤニヤと笑ったが、兄妹は不審に思った。
ゲインは日頃から「屠殺は嫌いだ。血を見るだけで気を失いそうになる」と言っていたからだ。事実、ゲインは鹿狩りに参加したことはない。
「でもまあ、当のエディー本人がそう言っているんだからそうなんだろう」とボブは納得し、ゲインに町まで送ってもらった。
そして、御礼としてボブの母アイリーンはゲインに夕食を食べていくように勧めた。
ゲインがメインディッシュのポークチョップに舌鼓を打っている最中、バーニス・ウォーデン夫人失踪のニュースがヒル家にも届いた。
ボブの母アイリーンがゲインにからかい半分でこんな質問をした。「誰かが頭を吹き飛ばされたり、いなくなったりする時、どうしていつもあなたが近くにいるの?」
その時ゲインは、肩をすくめてニヤニヤと笑っただけだったという。
腹いっぱいになり、満足して帰路についていたゲインを、ダン・チェイス交通巡査ポーク・スピーズ保安官代理が発見。ゲインに今日1日の行動を質問した。
2度の供述には明らかに食い違いが見られ、そのことを指摘されるとゲインは慌てて「誰かが俺を陥れようとしたんだ」と答えた。
「陥れようとしてる?何のことで?」チェイス巡査が質問すると、ゲインは答えた。「ウォーデン夫人だよ」

「だってあの人、死んだんだろう?」

「死んだって!?」チェイス巡査は叫びに近い金切り声を上げた。
「我々は今日1日のアンタの行動を聞いただけだ! 『ウォーデン夫人が死んだ』なんて一言も言ってないぞ!?」ゲインは重要参考人として身柄を拘束された。
ゲイン身柄拘束の連絡を受けたシュリー保安官は、隣接するグリーンレイク郡保安官事務所のロイド・シューフォースター所長と共にゲインの家に到着。
台所の増築部分のドアを破壊し踏み込んだ2人は、懐中電灯のスイッチを入れた途端恐怖に息を飲んだ。
懐中電灯に照らし出されたのは、逆さにY字で吊るされた女性の首無し死体だった。
さらに女性の死体は胴の部分がポッカリと空洞で、狩猟された鹿肉のように内蔵を抜かれ、血抜きされ、皮を剥がされていた。
シューフォスター所長は言葉を失い、そしてシュリー保安官は家を飛び出し雪上で激しく嘔吐した。
汚らしく散らかったゲインの家の内部

捜査:吐き気を催す家宅捜索
何とか冷静さを取り戻したシューフォスター所長は、無線で警察に応援を要請。逃げ出したい気持ちをこらえ、2人は再び探索を続けることにした。
ゲインの家は、ゴミと汚物にまみれていた。広い屋敷の中で、実際に使われていたのはせいぜい3部屋ほどであった。
ゴミの山に混じり、コーヒー缶にはガムが大量に吐き捨てられていた。ホラー雑誌や殺人書籍が大量に山積みされており、暖炉の上には入れ歯がずらり並んでいた。
死体の存在を別にしても、こんな空間で生活出来る人間がいるなど、信じられかった。
やがて応援の警察の捜査班も駆けつけ、家の中に小型バッテリーを持ち込んでアーク灯に照らし出された光景に、捜査員たちは絶句した。
テーブルには頭蓋骨をノコギリで半分に断ち割ったものがスープ椀として置かれていた。椅子の座板には、人間のなめした皮が張ってあった。
その他にもランプの笠、ブレスレット、タムタム太鼓、狩猟用ナイフの鞘、足の皮膚で作ったレッグウォーマーなど、人間の皮を加工して作った様々な小品が見つかった。
さらには、女の上半身の皮を丁寧に剥がして作られた、乳房付きのベストがあった。
床の靴箱の中には、女性性器が9つコレクションされていた。
ほとんどは乾いて干からびていたが、ひとつはごく新鮮で、陰毛の生えた外陰部に性器と肛門が付いているのが肉眼でも分かった。しかもそれは塩漬けにされていた。
(これはのちの鑑識でウォーデン夫人のものであるのが確認された)
頭蓋骨を半分に割って作ったスープ椀
だが、中でも一番捜査陣を戦慄させたのは、ゲインの干し首コレクションだった。
捜査陣も、未開部族の伝説の話くらいに思っていた人間の干し首を、まさかその目で見ることになるとは、思いもしなかった。
いずれも慎重に女性の頭蓋骨から頭髪のついたまま皮を剥がされ、紙やボロ布を詰めてオイルを丹念に塗られて、表面の滑らかさを保たれていた。
その内の1番新しいものは、3年前に行方不明となっていた酒場の女将、メアリー・ホーガンのものだった。
捜索に当たった保安官、警官たちは恐怖で顔面蒼白になりながらも、ゲイン宅をかきまわし、探りまわし、様々な「人間のパーツで作った日常品」を発掘した。
ウォーデン夫人の心臓はビニールに詰められて、内蔵は古いスーツに包まり発見された。
頭部は干し首にするつもりだったのだろう、耳に紐がついた状態で台所から発見された。

そうして彼らは、ついに一階の母屋の奥へと突き当たった。ドアが厳重に板張りで封じられた、その部屋へと。
釘が抜かれ、板が外され、彼らが見たもの―──それは壮麗な「墓場」だった。
そこはオーガスタの部屋であった。彼女の生前の状態そのままに、その部屋は「聖域」として12年間強固に守られ続けていたのだ。
家具類も暖炉の上の飾りものにも、分厚いホコリがかかるまで。

取調べに対し、ゲインはウォーデン夫人の死を「銃の暴発による不幸な事故だ」として故殺でないと主張した。
それにしても、メアリー・ホーガンとバーニス・ウォーデン以外の干し首などの人体コレクションは一体誰のものなのか───
この疑問に対し、ゲインの回答は再び捜査陣に恐怖を植えつけた。

「彼女たちは、墓を掘り起こして連れてきました」

母が死んで5年後くらいから墓荒らしを始めたという。新聞の死亡欄を常にチェックし、中年女性が死ぬとその遺体を盗んだ、というのだ。
ゲインの供述通り、2つの墓の内1つは死体が入ってなく、もう1つは人間のわずかな残骸が残っていただけだった。
ゲインの自供は真実なのを確認した捜査当局は、墓の捜索を打ち切った。

公判:精神病院へ
ゲインに命を奪われた被害者2人は、ともに体格のいい気丈な中年女性で、彼にとって全能の女神であるオーガスタに非常に似ていた。
母親オーガスタが死ぬまで崇拝し続けたゲインは、オーガスタの死を受け入れられなかった。墓から「彼女に似た」中年女を掘り起こすことで、母を死から救おうとした。
それと同時に、その死体を解体し、ありとあらゆる損壊を加えることで、彼は復讐をも試みていたのだ。
メアリー・ホーガンとバーニス・ウォーデンを殺害したのも、おそらく無意識に母オーガスタを殺害していたのだろう。
友達を作ることさえ許してくれず、常に威圧的で彼の一生分の幸福を奪った償いとして。
(もっとも、ゲインはまったくそれを自覚してはいなかったと思うが)

ゲインは殺人以外の供述には至極協力的で、捜査員の言葉に迎合して「彼らを喜ばそうと」子供のように無邪気だったという。
尚、死姦と人肉食は頑として否定した。「臭いが酷くて耐えられなかったので」と答えた。

「月夜の晩に女の顔から剥がした皮をかぶったり、乳首付きのベストを着て、皮張りの太鼓を叩いて……」

そして彼は自分の性器を切断したいと思ったこと、死体から切り取った女性器で己の性器をくるみこんで隠してみたこと、女性の下着を身に着けたことがあること、
などをごく控えめに認めた。
精神鑑定の結果、ゲインは性転換願望がかなり強いのが確認された。彼は女になりたかったのだろうか?
いや、ゲインはおそらくオーガスタになりたかったのだろう。この世で彼の唯一認める、全知全能の存在に。

12月18日、ゲインを精神鑑定したウィンスコンシン州立中央病院の医師団は「被告が法廷に立つことは不適切」との見解を提出、
ゲインはそのまま州立中央病院に無期限で収監されることになった。
約11年後の1968年11月14日に行われた裁判でゲインは有罪判決を受けたが「重度の精神病患者」として刑務所送りにはならず、再び州立中央病院に入れられた。
彼はそこで模範患者として静かに過ごしていたが、1974年2月、突如として「精神障害を克服した」として釈放の嘆願を提出、周囲を仰天させた。
法廷での傍聴前にゲインは記者たちに「これからは人生を有意義なものにしていきたいし、世界一周旅行の計画も練っているんだ」と愛想よくしていた。
しかし、ゲインのこの嘆願は却下された。医師の1人の「彼を長年蝕んできた精神異常は、すぐに再発する可能性がある」という診断結果が致命的だった。
退院を求めて傍聴席に座るゲイン
1978年、ゲインはメンドータ研究所付属精神病院に移送され、ついにそこから退院することはなかった。
1984年7月。ゲインは癌による呼吸不全で息を引き取った。78歳だった。彼の死体は、最愛の母親の墓標のすぐ隣に、墓標なしで埋葬された。
ゲインのその異常、邪悪にして純真で無垢な魂は、後世に凄まじい影響を与えた。
『サイコ』の溺愛していた母をもう1つの人格としてもつノーマン・ベイツも、『羊たちの沈黙』の乳房つきチョッキを着るバッファロー・ビルも。
ゲインなくしては生まれてくることはなかったのだ。
事件が起こったプレーンフィールドには、今でもこんな小話が残っている。

「昔、ウィンスコンシンの片田舎にエドという小男が住んでいた。
女を口説いて誘う術(すべ)を知らなかったエドは、女がほしくなると墓場からつれてきた」


参考文献
週刊マーダーケース・ブックNo.72 プレインフィールドの屠殺人 (デアコスティーニ)
快楽殺人者の異常心理 (KKベストセラーズ)
オリジナル・サイコ 異常殺人者エド・ゲインの素顔 (ハヤカワ文庫NF)
参考サイト
+ M O N S T E R S +
殺人博物館

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テーマ:衝撃 - ジャンル:サブカル

コメント

更新を楽しみにしてます。
頑張って下さい。

  • 2013/06/07(金) 23:47:23 |
  • URL |
  • れん #-
  • [ 編集 ]

Re: タイトルなし

> 更新を楽しみにしてます。
> 頑張って下さい。
はじめまして、とあるプロファイラーです。
今回はドイツの歴史ミステリー、カスパー・ハウザーを取り上げてみました。
マイペースな更新ですが、気長にお待ちいただければ幸いです。

  • 2013/06/13(木) 02:30:14 |
  • URL |
  • とあるプロファイラー #-
  • [ 編集 ]

更新お疲れ様です
毎回楽しみにしてます

エドゲインは猟奇殺人犯では最も有名な一人だと思います。
彼を最初に知ったときは発想に驚かされました。
ルーカスもそうですが、母親の影響がなかったらどうなっていたかを考えてしまいます。

  • 2013/06/21(金) 12:43:05 |
  • URL |
  • スバル #hlEkuusM
  • [ 編集 ]

Re: タイトルなし

> エドゲインは猟奇殺人犯では最も有名な一人だと思います。
> 彼を最初に知ったときは発想に驚かされました。
> ルーカスもそうですが、母親の影響がなかったらどうなっていたかを考えてしまいます。
ゲインの異常性も、また突き抜けていますよね。
他にもエド・ケンパー、ジェラルド・スタノもそうですし、
母親や父親が作ってしまった殺人鬼、は多いと思います。

  • 2013/06/24(月) 22:41:05 |
  • URL |
  • とあるプロファイラー #-
  • [ 編集 ]

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

  • 2013/07/05(金) 08:23:52 |
  • |
  • #
  • [ 編集 ]

Re: 更新頑張ってください。

> 初めてコメントさせて頂きます。
> とてもよくまとめられていて、
> 記事のタイトルも惹かれるものばかりです。
>
> ただ1つ改善して頂けたら、と
> 思った事があるので書きます。
>
> 被害者の方のことを考慮して、
> 「死体」という表現に引っ掛かりました。
>
> 被害者の方は、あくまで被害者です。
> 良ければ、被害者の方の事を記す時
> だけでも「遺体」という表現を
> 使って頂けたらもっといいかなあ
> と思いました。
>
> 私個人の意見ですので、判断は
> お任せします。
>
> 偉そうに書いてしまいましたが、
> 更新お待ちしています。
> 頑張ってください!

はじめまして、管理人のとあるプロファイラーです。
死体と遺体、についはあえて書き分けております。
気が向いた時に更新するので間隔は開き気味ですが、
今後ともご贔屓にしていただければ幸いです。

  • 2013/07/30(火) 16:21:39 |
  • URL |
  • とあるプロファイラー #-
  • [ 編集 ]

承認待ちコメント

このコメントは管理者の承認待ちです

  • 2014/01/24(金) 19:03:28 |
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